性暴力対応看護師(SANE)とは
SANEって聞いたことはあるんですけど、よくわからなくって・・・
SANEは、フォレンジック看護と呼ばれる「暴力と虐待の被害者と加害者への特別なケア(国際フォレンジック看護学会)」のトレーニングを受けた看護師に含まれます。
SANEは性暴力被害者の専門的なケアとサポートを行う重要な役割を担い、被害者の身体や心の健康を守り、被害者が必要なサポートを受けられるようにします。
SANEの主な役割
1. 被害者のサポート: SANEは被害者を助け、感情的なサポートを提供します。被害者が安心感を感じ、自分を理解してもらえることが大切です。
2. 診察と治療: 被害者の身体的な状態を評価し、必要な治療を提供します。性感染症のリスク評価や予防措置も行います。
3. 法医学検査: 検体採取などもSANEの重要な役割です。これは事件の調査や法的手続きに役立ちます。
4. 法的支援: SANEは法的手続きに関する情報を提供し、被害者が自分の権利を理解し、適切な選択をするのを支援します。
5. 協力機関との連携: SANEは警察、弁護士、心理療法士などの専門家と連携し、被害者に包括的な支援を提供します。
SANEの重要性
- 性的暴力は身体的、精神的に深刻な影響を及ぼす可能性があり、被害者にとって非常に難しい経験です。SANEの存在は被害者が適切なケアとサポートを受けられることを保証し、回復プロセスを助けます。
- SANEは法医学検査についての専門知識と技術を持っており、犯罪の訴追に貢献します。
- 被害者はSANEを通じて匿名でケアを受けることができ、プライバシーが守られます。
つまり、SANEは、性的暴力被害者に対する専門的な看護ケアと支援を提供する大切な存在であり、被害者の回復と正義の追求に貢献しているんです。
なるほど!被害者へのサポートだけでなく、性暴力被害に関するさまざまな被害者支援を行う重要な仕事なんですね!
性暴力対応看護師SANEに始まるフォレンジック看護師FNP
フォレンジック看護は、1970年代の米国で、SANEと呼ばれる性暴力対応看護師の活動から始まりました。多くのSANEは、主にDV(ドメスティック・バイオレンス)や虐待に対応していた看護師たちでした。
最初のSANE養成のためのプログラムは、1976年米国テネシー州で開始されました。
1992年国際フォレンジック看護学会(IAFN: International Association of Forensic Nurse)設立後は、性暴力被害者の法医学検査に関する専門教育を受けた看護師として定義されています。法医学的証拠のための性器検査や証拠採取、性感染症予防や妊娠と避妊、危機介入と継続的なフォローアップのための他部門や他機関への紹介を役割としています。
現在米国では、フォレンジック看護学は大学院の高度実践看護教育に組み入れられ、フォレンジックナース・プラクティショナー(FNP: Forensic Nurse Practitioner)としてより質の高い専門的ケアを提供しています。
長江美代子 (2013). 看護ケア:海外におけるSANEのトレーニング(主に米国の場合). 女性の安全と健康のための支援教育センター (編集.), 性暴力被害者支援看護職養成講座テキスト 第2版 (pp. 260-264)
フォレンジック看護学とは Forensic Nursing
フォレンジック看護学(Forensic Nursing)とは、暴力に関する健康課題を扱う看護領域ですが、日本の看護教育にはまだ、必須のカリキュラムとして取り入れられていません。従来看護学は、成人、老年、母性、小児、精神、地域、公衆衛生といった医学モデルの領域に区分され教育されてきました。しかし現実には、これら全てにまたがる看護領域があります。国際看護学、ウーマンズヘルス看護学、災害看護学、そしてフォレンジック看護学などがそれに該当します。
フォレンジック(forensic)の語源はラテン語のforens (公開広場)、英語ではforumになります。現在forensicは「犯罪科学や法医学に関するもの」に用いられていますが、古代では広場で公開討論をして主張を争ったという歴史的経過を踏まえて、「法廷に関する」という意味もあります。日本では一般的に「司法」と訳されてはいますが、この漢字から、急にイメージする意味合いが狭くなってしまいます。日常的トラブルと既存の法的な犯罪類型との間のグレーゾーンに陥りがちな、DV・虐待・ネグレクト・いじめ・ハラスメント・ストーキング・クレーマーなどの暴力が抜け落ちてしまうよりは、理解を深めるところからはじめたほうがよいのではないかと、なじみのない「フォレンジック」ということばをそのまま使って表現しています。
長江美代子. (2017). フォレンジック看護が支えるもの. 日本フォレンジック看護学会誌, 3(2), 115-119.
性暴力被害の急性期対応
性暴力被害の急性期対応ではSANEが重要な役割を担っています。
性犯罪・性暴力被害者の急性期は、赤字マークのところですが、被害直後から72時間以内が最も重要です。また、被害から数か月、数年後でもフラッシュバックやPTSD症状が発覚し苦しくなった時も急性期として対応します。これは、被害者が、今まさに、被害を受けている、受けた状態に引き戻されるためです。
身体的支援としての、診察や検体採取、緊急避妊薬の服用は、早ければ早いほどよく、証拠能力としても高くなります。また、避妊薬の効果も維持されます。
心理的には、急性ストレス障害となりますが、周囲の支援や継続的なかかわりを持つことで、1か月程度で徐々に落ち着くことも多く、できるだけ早い相談が大事です。1か月以上急性ストレス症状が継続する場合は心的外傷後ストレス障害への移行を疑い、トラウマ・PTSD専門家への相談が必要になります。
被害直後は混乱していることが多いため、適切な法的支援や生活を確認することも大事です。知らないことで不安が増強することは多いので、同時に情報提供は重要です。
急性期が過ぎても、被害者とつながりながら継続的支援を行うことは重要です。